海外転職:イギリスの給与
年収1,500万円超も可能 職種・経験・勤務地で大きな差
安定した法制度と国際的なビジネス環境を背景に、イギリスは日本人にとって人気の海外転職先のひとつです。特に金融・IT・エンジニアリング分野では、日本人の専門性が評価される場面も多く、高収入を狙えるチャンスも広がっています。
給与は年収ベースで提示、最低賃金も上昇中
イギリスでは、給与は年収(Gross)ベースで提示されるのが一般的です。
2025年4月から最低賃金(21歳以上の全国生活賃金)は時給12.21ポンドに引き上げられており、フルタイム換算で年収約25,000ポンド(約487万円)が最低ラインとなっています。
イギリス給与目安:職種別・役職別の年収
以下は、イギリスにおける代表的な職種の年収目安(所得税・諸手当込み)です。(※£1 ≒ 195円、2025年5月時点の為替レートに基づく)
職 種 | エントリーレベル | 経験者 |
経理(有資格者) | £25K〜35K(約487万〜683万円 | £40K〜80K(約780万〜1,560万円) |
金融営業 | - | £40K〜150K(約780万〜2,925万円) |
秘書・アシスタント | £25K〜35K(約487万〜683万円) | £40K〜70K(約780万〜1,365万円) |
営業(技術営業含む) | £25K〜35K(約487万〜683万円) | £35K〜100K(約683万〜1,950万円) |
貿易・物流実務 | £25K〜28K(約487万〜546万円) | £30K〜50K(約585万〜975万円) |
エンジニア | £25K〜40K(約487万〜780万円) | £40K〜80K(約780万〜1,560万円) |
ITシステムエンジニア | £25K〜30K(約487万〜585万円) | £40K〜90K(約780万〜1,755万円) |
※上記はあくまで目安であり、企業規模、地域、経験年数、スキルセットによって大きく変動します。
経験と専門性が収入に直結
イギリスでは、経験年数や専門資格の有無が給与に大きく影響します。たとえば、経理職ではACCAやCIMAなどの国際資格を保有しているかどうかで、年収が大きく変わる傾向があります。また、ITやエンジニア職では、特定のプログラミングスキルやプロジェクト経験が評価され、高収入につながるケースも少なくありません。
ロンドンと地方都市での格差も
同じ職種でも、ロンドンと地方都市では年収に£10K〜£20K程度の差が出ることもあります。これは、ロンドンの生活費や家賃の高さを反映したものであり、可処分所得(手取り)を考慮した判断が重要です。
ビザの種類によっても選択肢に差
イギリスでの就労には、適切なビザの取得が前提となります。配偶者ビザやパートナービザを保有している場合は、就労制限がないため、より多くの職種に応募可能です。一方、YMS(ワーキングホリデー)ビザなどでは、就労期間や職種に制限があるため、応募できるポジションが限られることもあります。
相場を知り、戦略的に動く
イギリスでの転職を成功させるには、職種ごとの給与相場を把握し、自身のスキルや経験を的確にアピールすることが重要です。さらに、ビザの種類や勤務地による条件の違いを理解したうえで、現地の雇用市場に合った戦略を立てることが、キャリアアップへの第一歩となります。
海外転職:イギリスのボーナス
成果主義が基本、支給額もタイミングも「実力次第」
イギリスで働くうえで、給与体系の理解は欠かせません。特に日本と大きく異なるのが「ボーナス制度」です。日本では年2回の賞与が慣例となっている企業が多い一方で、イギリスではボーナスはあくまで「成果に応じた報酬」として位置づけられており、支給の有無や金額は保証されていません。
ボーナスは「評価の結果」、固定ではない
イギリスの企業におけるボーナスは、会社の業績や個人のパフォーマンスに基づいて支給されるのが一般的です。支給額は固定されておらず、年収の5〜30%程度が目安とされますが、これはあくまで参考値であり、業界や企業文化によって大きく異なります。
たとえば:
金融・投資業界では、年収の50%〜100%に相当する高額ボーナスが支給されることもあります。特にロンドンのシティ(金融街)では、ボーナスが年収の中核を占めるケースも珍しくありません。
ITやテクノロジー業界では、プロジェクトの成功やKPI達成に応じた成果報酬型のボーナスが導入されている企業が多く見られます。
一般事務職やサポート職では、年収の5〜10%程度が支給されることが多く、企業によってはボーナス制度自体が存在しない場合もあります。
ボーナスの種類と支給タイミング
イギリスでは、以下のようなボーナス制度が導入されていることがあります。支給時期は企業によって異なりますが、年度末(3月〜4月)や年末(12月)に支給されるケースが多いです。なお、ボーナスは給与とは別に課税対象となるため、手取り額は税引き後の金額となります。
Annual Bonus(年次ボーナス):年1回、会社の業績と個人評価に基づいて支給される最も一般的な形式です。
Performance Bonus(成果報酬):プロジェクトの成功や営業成績など、明確な成果に対して支給されます。
Signing Bonus(入社ボーナス):特に競争の激しい業界やポジションで、優秀な人材を確保するために支給される一時金です。
Retention Bonus(定着ボーナス):一定期間在籍した社員に対して支給される報奨金で、離職防止の目的があります。
ボーナスの有無は求人票に明記されないことも
イギリスでは、求人票にボーナスの有無や金額が明記されていないことも多く、面接時やオファー時に詳細が伝えられるケースが一般的です。そのため、転職活動の際には、ボーナス制度の有無や評価基準について確認することが重要です。
成果主義の中で信頼と実績を築く
イギリスのボーナス制度は、「働いた分だけ報われる」成果主義の文化を反映しています。安定したボーナスを前提とするのではなく、日々の業務で成果を出し、信頼を積み重ねることが報酬につながるという考え方が主流です。
海外転職を成功させるためには、こうした報酬体系の違いを理解し、自身の働き方や価値観と照らし合わせて判断することが大切です。
海外転職:イギリスの福利厚生・諸手当
日本との違いを理解し、事前確認がカギに
海外転職を検討する際、給与と並んで重要なのが「福利厚生・諸手当」の内容です。イギリスでは、日本のように手厚い手当や補助があるとは限らず、企業ごとに制度が大きく異なるため、事前の確認が欠かせません。
手当は「支給されない前提」で考える
イギリスでは、住宅手当や交通費、残業代などが支給されないことが一般的です。これらはすべて「給与に含まれている」とみなされるケースが多く、日本のように明細で分けて支給されることは少数派です。
そのため、転職時には「基本給」だけでなく、「総支給額(年収)」を基準に生活設計を立てることが重要です。
確認すべき福利厚生の主な項目
企業によっては、以下のような福利厚生が提供されている場合があります:
住宅手当:外資系企業や駐在員向けポジションでは支給されることもありますが、現地採用では稀です。
交通手当:ロンドンなど都市部では公共交通機関の利用が前提となるため、支給されないことが一般的です。
健康保険:イギリスにはNHS(国民保健サービス)があるため、基本的な医療は無料ですが、民間医療保険(Private Health Insurance)を企業が提供するケースもあります。
一時帰国費用:駐在員契約では支給されることがありますが、現地採用では対象外となるのが通常です。
通信費・在宅勤務手当:リモートワークが普及する中で、通信費や在宅勤務環境整備費を補助する企業も増えています。
年金制度は企業側に義務あり
イギリスでは、企業に対して従業員の年金制度(Workplace Pension)への自動加入が義務付けられています。これは「Auto-enrolment」と呼ばれ、一定の条件を満たす従業員は自動的に企業年金に加入し、企業と従業員がそれぞれ一定額を拠出します。この制度により、将来の年金資産形成が支援される仕組みとなっており、企業によっては拠出額を上乗せする「マッチング制度」を導入している場合もあります。
福利厚生は「企業ごとに違う」が前提
イギリスでは、福利厚生や手当の内容は企業ごとに大きく異なるため、転職活動の際には「何が含まれていて、何が含まれていないか」を明確に確認することが重要です。特に、日本の常識がそのまま通用しない点を理解し、総合的な条件で判断する姿勢が求められます。
海外転職:イギリスの税金(イギリスの所得税)
累進課税制で最大45%、給与明細の見方にも注意を
イギリスで働くうえで避けて通れないのが「税金」の理解です。特に所得税(Income Tax)は、給与から自動的に差し引かれる仕組みとなっており、手取り額に大きく影響します。日本とは異なる課税年度や税率体系を理解しておくことが、現地での生活設計に役立ちます。
所得税は4月スタート、累進課税制を採用
イギリスの所得税は、毎年4月6日から翌年4月5日までの課税年度で計算されます。税率は累進課税制が採用されており、所得が増えるほど高い税率が適用されます。
所得税の税率(2024/25年度)
所得帯(年間) | 税率 | 備考 |
£0〜£12,570 | 0% | Personal Allowance(基礎控除) |
£12,571〜£50,270 | 20% | Basic Rate(基本税率) |
£50,271〜£125,140 | 40% | Higher Rate(高税率) |
£125,141以上 | 45% | Additional Rate(追加税率) |
※ Personal Allowance(基礎控除)は、年収が£100,000を超えると段階的に減額され、£125,140以上で完全に消失します。
※ 税年度は毎年4月6日から翌年4月5日までで、これは日本と異なる点です。
所得税の納付方法:給与から自動控除
イギリスでは、雇用されている場合、所得税は「PAYE(Pay As You Earn)」制度により、雇用主が給与から源泉徴収し、税務当局(HMRC)に納付します。給与明細には、所得税(Income Tax)と国民保険料(National Insurance)が明記されており、手取り額はこれらを差し引いた後の金額となります。
自営業や副業収入がある場合は「自己申告」
自営業者や副業収入がある場合は、Self Assessment(自己申告)制度を通じて、年に一度、自分で税額を計算し納付する必要があります。申告期限は通常、翌年の1月31日までで、オンラインでの提出が一般的です。
税制の特徴と注意点
基礎控除(Personal Allowance)は年収が£125,140を超えると段階的に減額され、最終的にはゼロになります。
所得税とは別に、国民保険料(NI)も給与から差し引かれます。これは日本の社会保険料に相当し、年金や医療サービスの財源となります。
ボーナスや副収入も課税対象となるため、年収が増えると税率が上がる可能性があります。
手取り額の把握が生活設計のカギ
イギリスの所得税制度は、シンプルながらも累進課税による影響が大きく、年収が高くなるほど手取り率が下がる仕組みです。転職や就職の際には、提示された年収が「税引き前」であることを前提に、手取り額を試算しておくことが重要です。
また、税制は年度ごとに変更される可能性があるため、最新情報を定期的に確認する習慣も大切です。
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