東南アジアの中心に位置するマレーシアが、移住希望者の間で根強い人気を誇っています。一般財団法人ロングステイ財団の調査によると、同国は14年間「移住したい国ランキング」で1位に選ばれ続けました。
温暖な気候と多様な文化が共存するマレーシアは、首都クアラルンプールをはじめ、歴史的な街並みが残るマラッカ、リゾート地として知られるペナン島やランカウイ島など、魅力的な都市が点在しています。観光地としての知名度も高く、日本からの渡航者も年々増加傾向にあります。
近年では、長期滞在や移住を目的とした渡航者が増えており、現地での生活環境や教育、医療、交通、通信インフラなどの整備状況にも注目が集まっています。特に、物価の安さや英語が通じる環境、治安の良さなどが評価されており、リタイア後の移住先としても人気を集めています。
目次 |
1.マレーシア基本情報
マレーシアは東南アジアに位置し、マレー半島とボルネオ島北部から構成されています。日本との時差はマイナス1時間で、飛行機では約6.5時間の距離にあります。
首都:クアラルンプール
面積:約33万㎢(日本の約0.9倍)
人口:約3,275万人(2021年時点)
民族構成:マレー系(61.6%)、中国系(22.6%)、インド系・その他(15.8%)
言語:国語はマレー語。英語、中国語、タミール語も広く使用されています。
宗教:国教はイスラム教。他に仏教、キリスト教、ヒンドゥー教なども信仰されています。
気候
マレーシアは年間を通じて温暖な熱帯気候で、雨季と乾季があります。雨季にはスコールが降ることもありますが、日本の梅雨のように一日中降り続くことは少なく、比較的過ごしやすい気候です。
物価と生活費
かつては「日本の1/3」と言われていましたが、現在は日本の2/3程度が実感値です。
外食や交通費は安価ですが、日本食や輸入品は割高です。
家賃は都市部でも東京より安く、クアラルンプールで1LDKが月5〜10万円程度が目安です。
生活利便性
英語が広く通じるため、言語面での不安は少なめです。
日本人学校や日本食レストランも多く、日本人コミュニティが形成されています。
医療水準も高く、私立病院では英語対応が可能です。
2.マレーシアの治安は?
マレーシアは東南アジアの中でも比較的治安が良いとされており、穏やかで親日的な国民性が特徴です。
日常生活では過度に神経質になる必要はありませんが、スリ、置き引き、ぼったくりなどの軽犯罪には注意が必要です。特に観光地や人混みでは、貴重品の管理や周囲への警戒を心がけましょう。
3.就職活動の前に知っておきたいマレーシアの経済と産業構造
マレーシアは、1981年に元首相マハティール氏が打ち出した「ルック・イースト政策」により、日本や韓国の経済成長をモデルとした教育・技術強化が進められ、親日的な国民性が根付いています。
主な産業構造
製造業:電気機器などを中心に、日系大手メーカーが多数進出。雇用創出に貢献。
農林業:天然ゴム、パーム油、木材など。
鉱業:錫、原油、LNGなどの資源が豊富。
デジタル経済と新産業
1996年に設立されたMDEC(マレーシア・デジタルエコノミー社)の支援により、近年はIT、BPO、SSC、スタートアップ企業の進出が活発。
2018年には国家政策「Industry 4WRD」が発表され、2025年までにハイテク産業の主要国化を目指しています。
この流れの中で、ICT分野で活躍する日系企業の需要も高まる可能性があります。
マレーシアは、新たな分野・産業における経済発展のポテンシャルが高い国と言えるでしょう。
4.マレーシアの食生活について
マレーシアは多民族国家であり、マレー料理、中華料理、インド料理など、さまざまな食文化が共存しています。日常的に多彩な料理を楽しむことができ、食の選択肢に困ることはほとんどありません。
外食
フードコートや屋台(ホーカー)では、1食あたりRM5〜20(約150〜600円)程度で手軽に食事ができます。地元の人々にも親しまれており、安価で美味しい料理が豊富です。
レストランは、予算やシチュエーションに応じて幅広い選択肢があります。宗教や文化によって食のルールが異なるため、会食時には相手の背景に配慮することが大切です。
テイクアウト・デリバリーも一般的で、フードデリバリーアプリやメッセージアプリを通じて注文が可能です。利便性が高く、日常的に利用されています。
自炊
日系スーパーでは、日本から輸入された調味料や加工食品、冷凍食品などが手に入ります。価格は日本の1.2〜1.5倍程度が目安です。
地場系スーパーでも、地元の食材に加えて、アジア各国や欧米からの輸入食品が豊富に取り揃えられており、日本食の材料も一部入手可能です。
多民族国家ならではの多様な食文化と、外食・自炊の両方に対応できる環境が整っており、日本人にとっても非常に暮らしやすい食環境が整っています。
5.コストパフォーマンスが高い住居情報
マレーシアで暮らすメリットのひとつに、住居のコストパフォーマンスの高さが挙げられます。
家賃相場について
クアラルンプール市内およびその近郊で、コンドミニアムに一人暮らしをする場合の家賃相場は、月額1,500〜3,000リンギット(約52,000〜105,000円)程度です。
「スタジオ」と呼ばれる日本のワンルームに相当するタイプや、「1ベッドルーム」と呼ばれる寝室とリビングが分かれた間取りの部屋は、いずれも40〜60平米と、ゆとりのある広さとなっています。
これらの物件の多くは家具・家電付きで提供されており、大掛かりな引っ越しをせずにすぐに生活を始めることが可能です。
住環境の特徴
日本人が多く住むコンドミニアムでは、24時間体制のセキュリティが常駐しているほか、居住者専用のカードキーによる入館システムなど、防犯対策がしっかりと整えられています。
ジムやプールが併設されている物件も多く、さらにバーベキューエリアやミニショップなどが併設されている場合もあります。日本では手が届きにくい高層マンションに、マレーシアでは比較的安価で住むことができる点は、大きな魅力です。
住居探しの方法
マレーシアでの住居探しは、日本と比べて非常にシンプルです。家具・家電付きの物件が多いため、契約完了後、早ければ翌日から入居可能な場合もあります。
住居探しの方法は主に以下の2つです。
不動産エージェントを活用する方法
希望する予算やエリアを伝えることで、複数の物件を紹介してもらえ、まとめて内見することができます。日系の不動産会社もありますが、駐在員や移住者向けの高額物件を多く取り扱っており、仲介手数料も高めです。英語に不安がない方には、地元の不動産エージェントの利用をおすすめします。インターネットで検索する方法
現地で広く利用されている物件検索サイトを活用することで、気に入った物件のオーナーや不動産会社、ブローカーと直接連絡を取ることができます。特定のコンドミニアムや物件が決まっている場合には、こちらの方法が便利です。
契約と引っ越しのタイミング
マレーシアの物件契約は1〜2年が一般的で、日本と比べて手続きが簡単なため、気分転換で引っ越しをする方も少なくありません。
引っ越しを希望する場合は、入居希望日の1〜2カ月前から物件探しを始めるのが理想的です。なお、オーナーにとっては早く入居してくれる方が好まれるため、2カ月以上前に探し始めた場合、手付金の支払いを求められることがありますので、注意が必要です。
6.もしもに備える医療事情
6. もしもの時に備える医療事情
マレーシアでは、症状に応じてクリニック、専門医、総合病院などを使い分けるのが一般的です。近年では、外国人向けの医療ツーリズムにも力を入れており、日本語通訳アシスタントが常駐する私立病院も増えています。
なお、病院の種類や診療内容によって料金が異なるため、事前に病院へ問い合わせて症状を伝え、診察費の目安を確認しておくことをおすすめします。
医療費の目安(2025年時点)
風邪など軽度の症状の場合
ローカルクリニック:RM50〜(約1,350円〜)
日系クリニック:RM100〜(約2,700円〜)
私立総合病院:RM200〜(約5,400円〜)
※別途、初診料や薬代がかかります。
専門医(眼科、皮膚科、耳鼻科など)
RM100〜(約2,700円〜)
※こちらも初診料や薬代が別途必要です。
歯科治療
虫歯治療:RM200〜(約5,400円〜)
クリーニング:RM100〜250(約2,700円〜6,750円)
保険の適用について
会社や個人で加入している保険、または日本のクレジットカードに付帯している海外旅行保険が適用される病院は限られています。保険の適用条件や対象病院については、事前に確認しておくことが重要です。
特に私立病院では、診療前にデポジット(預託金)を求められることがあり、軽度の症状でもRM500〜1,000(約13,500円〜27,000円)、重症の場合はRM5,000以上(約135,000円以上)必要になることもあります。
7.マレーシアの交通機関
クアラルンプール市内およびその近郊では、鉄道(LRT、MRT、モノレール、KTMコミューター)、空港鉄道、バス、タクシー、配車サービスなど、さまざまな交通手段が整備されています。
主な交通機関と運賃の目安(2025年時点)
都市鉄道(LRT、MRT、モノレール、KTM):RM1.0〜8.8(約35〜310円)程度。距離に応じて変動します。
空港鉄道(市内〜空港):片道RM55(約1,900円)程度。
市内バス:RM1〜3(約35〜105円)程度。無料で利用できる観光路線もあります。
タクシー:初乗りRM3〜(約105円〜)。メーター利用が原則ですが、事前確認が必要です。
配車サービス:RM5〜(約175円〜)。アプリで事前に料金が確定するため、安心して利用できます。
キャッシュレスと交通カード
マレーシアではキャッシュレス化が進んでおり、現金が使えない公共交通機関もあります。プリペイド式の交通カードを1枚持っておくと、鉄道、バス、高速道路、駐車場など幅広い場面で利用できて便利です。
タクシーと配車サービスの使い分け
クアラルンプール市内ではタクシーが多く走っており、短距離の移動や日中の利用に適しています。ただし、まれにメーターを使わずに高額な料金を請求されるケースもあるため、乗車前にメーターの使用を確認することをおすすめします。
一方、配車サービスはアプリを通じて事前に料金が確定するため、交渉の必要がなく、ストレスなく利用できます。複数のサービスが展開されており、用途や好みに応じて選ぶことができます。
8.携帯電話、SIMカード、Wi-Fiの入手方法
マレーシアでの生活を始めるにあたり、まず整えておきたいのが通信環境です。携帯電話やWi-Fiの契約は、日本と比べて比較的簡単に行うことができます。
携帯電話とSIMカードの契約
マレーシアで携帯電話を使用するには、通信会社と契約してSIMカードを入手する必要があります。日本でSIMロックを解除したスマートフォンを持ち込むか、現地で端末を購入することも可能です。
SIMカードの契約には、以下の2つの方式があります。
プリペイド式(トップアップ式)
短期滞在者向けで、契約期間の縛りがなく、必要に応じてチャージ(トップアップ)することで利用を継続できます。初回の有効期限は約半年で、期限内にチャージを行えば番号を維持できます。解約手続きは不要です。ポストペイド式(月額契約)
長期滞在者向けで、契約時にデポジットを支払い、月額プランを選択します。月額料金はおおよそRM60〜150(約2,000〜5,000円)で、通話は基本的に無制限、データ通信量はプランによって異なります。外国人の場合、デポジットが高めに設定されることがあります。
SIMカードは空港、市内の通信会社店舗、コンビニエンスストアなどで購入可能です。購入時にはパスポートの提示が必要です。
Wi-Fiの契約方法
Wi-Fi環境を整えるには、携帯電話会社のインターネットプランを利用するか、インターネット専業プロバイダーと契約する方法があります。主に以下の2種類のサービスがあります。
光ファイバー回線
月額RM100〜200(約3,400〜6,800円)程度で、安定した高速通信が可能です。ただし、コンドミニアムによって契約できるプロバイダーが異なるため、事前に確認が必要です。ポータブルWi-Fi(SIMカード利用型)
持ち運びが可能で、外出先でも利用できるため、柔軟な使い方ができます。こちらも月額制で、データ容量に応じたプランが選べます。
マレーシアのインターネットは、日本と比べても通信速度に大きな差はなく、在宅勤務にも十分対応できる品質です
9.子供の教育事情 (小中学校)
お子様がいる場合、学校選びは非常に重要な要素となります。マレーシアに住む日本人家庭では、主にインターナショナルスクールか日本人学校のいずれかを選択するケースが一般的です。
インターナショナルスクール
マレーシアには、英国式、米国式、豪州式、国際バカロレア(IB)など、さまざまなカリキュラムを採用したインターナショナルスクールが多数存在します。学費は学校や学年によって大きく異なり、年間RM15,000〜115,000(約51万円〜390万円)程度が目安です。
インターナショナルスクールでは、英語を中心とした教育が行われ、国際的な環境の中で学ぶことができます。多くの学校では、入学試験や面接があり、英語力や学力が求められる場合があります。
日本人学校
マレーシアには、日本人学校が4校あり、クアラルンプール、ペナン、ジョホールバル、コタキナバルに設置されています。これらの学校では、日本国内と同様の教育課程が提供されており、日本語で授業が行われます。
ただし、日本人学校は私立扱いとなるため、学費が発生します。年間の授業料は約RM15,000〜(約51万円〜)で、入学金や施設利用料、通学バス代などの諸経費も別途必要です。
入学には以下の条件が一般的です:
日本国籍を有していること
マレーシアの長期滞在ビザを取得していること
保護者が現地の日本人会に所属していること
なお、日本人学校は中学部までの設置となっており、高校からはインターナショナルスクールや近隣諸国の日系私立校、日本国内の高校への進学が必要となります。
ローカルスクールについて
マレーシアの現地校(ローカルスクール)への入学は、制度上不可能ではありませんが、言語や宗教、国籍などの条件が関係するため、非常に困難です。そのため、日本からの移住者が選択するケースはほとんどありません
10.就労ビザ取得について
マレーシアで就労するためには、原則として「就労ビザ(Employment Pass)」の取得が必要です。その他にも、滞在目的に応じて観光ビザ、学生ビザ、扶養家族ビザなどの種類がありますが、就労を伴う場合は適切なビザの取得が求められます。
| ビザの種類 | 目的 | 就労可否 |
観光ビザ | Tourist Visa | 観光等短期渡航 | × |
学生ビザ | Student Pass | 留学等勉学目的での渡航 | × |
就労ビザ | Employment Pass (EP), Professional Visit Pass (PVP) | 就労目的での渡航 *PVPは短期就労のみ(最長1年) | 〇 |
扶養家族ビザ | Dependent Pass (DP) | 上記就労者帯同の家族向け | × |
長期ソーシャルビジットパス | Long Term Social Visit Pass (LT-SVP) | マレーシア人の外国人配偶者向け | △(別途就労許可が必要) |
その他 | Diplomatic, Official等 | 外交目的等その他の場合 | × |
Employment Pass(EP)のカテゴリーと条件
Employment Pass(EP)は、給与水準に応じて以下の3つのカテゴリーに分かれています:
カテゴリー1
最低月収:RM10,000以上
雇用期間:最長5年(更新可)
家族帯同・メイド雇用:可カテゴリー2
最低月収:RM5,000〜9,999
雇用期間:最長2年(更新可)
家族帯同・メイド雇用:可カテゴリー3
月収:RM3,000〜4,999
雇用期間:最長1年(更新は最大2回まで)
家族帯同・メイド雇用:不可
※このカテゴリーは一部企業に限定され、発行には特別な許可が必要です。
Employment Pass 取得の一般的な流れ
企業からの内定受諾(オファーレターへの署名)
必要書類の準備
- 英文履歴書
- 英文卒業証明書・成績証明書(カラー)
- パスポート全ページのコピー(カラー)
- パスポートサイズの証明写真(背景は青)
- 英文戸籍謄本(氏名変更がある場合)企業が管轄省庁(ESDまたはMDEC)へ申請
承認レター(Approval Letter)を受領後、eVISAを申請・取得
マレーシア入国後、パスポートに就労ビザを貼付
※申請方法や必要書類は企業や業種によって異なる場合があります。
学歴・職歴の要件
就労ビザの取得には、学歴と職務経験が審査対象となります:
大卒:関連職務経験3年以上
短大・専門卒:5〜7年以上
高卒:7〜10年以上
※一部のデジタル関連企業では新卒でも取得可能な場合があります。
11.マレーシア渡航前に準備すること
就労ビザを取得し、マレーシアへの渡航が決まったら、具体的な準備が必要になります。これまで多くの方の渡航をサポートしてきた経験をもとに、To Doリスト形式でご紹介します。
To Do 1:就労ビザ申請のための書類準備
マレーシアでの就労には、就労ビザ(Employment Pass)の取得が必要です。申請には以下の書類が求められることが多いため、早めの準備をおすすめします。
英文卒業証明書(企業によっては英文成績証明書も必要)
英文履歴書
パスポート全ページのカラーコピー
パスポートサイズの証明写真(背景は青)
To Do 2:日本国内での役所関連手続き
海外転出届の提出:お住まいの市区町村役所で手続きが必要です。
住民票の除票:これにより健康保険・住民税の支払い義務が変わります。
通院が必要な方は住民票を残す選択肢もありますが、その場合は国民健康保険・住民税の支払いが継続されます。
国民年金:住民票を抜くと支払い義務はなくなりますが、任意で継続することも可能です。
To Do 3:在留届の提出
マレーシアに3カ月以上滞在する場合は、在留届の提出が義務付けられています。現地で住所が決まり次第、在マレーシア日本大使館または外務省のオンラインサービスから提出しましょう。
To Do 4:渡航用の荷物の準備
マレーシアでは日系の店舗やスーパーマーケットが多く、日本製品も比較的手に入りやすいため、荷物は最小限でも問題ありません。ただし、以下のものは日本から持参することをおすすめします。
スーツ:常夏の気候でも、会議や会食などで必要になる場面があります。
薬・サプリメント:常用薬や飲み慣れた市販薬、サプリメントは持参すると安心です。
化粧品:現地でも購入可能ですが、価格が高めのため日本での購入がお得です。
To Do 5:生活セットアップのための準備
生活費の準備:入社初月は給与が満額支給されない場合もあるため、1〜2カ月分の生活費を用意しておくと安心です。
住居契約の初期費用:一般的に家賃の3.5〜4カ月分が必要です。
前家賃(1カ月分)
デポジット(2カ月分)
光熱費デポジット(0.5〜1カ月分)※デポジットは退去時に問題がなければ返金されますが、クリーニング代などが差し引かれる場合もあります。
現金の準備:クレジットカードや電子決済が普及していますが、現金のみ対応の店舗もあるため、ある程度の現金を持参しましょう。
クレジットカードの確認:海外利用が可能か、利用限度額に制限がないかを事前に確認しておくと安心です。
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