アメリカに駐在員として出向し、初めて「人事/人材採用」に関わる方も多いかと思います。アメリカでの採用活動を開始する際には、人事関連のポイント(アメリカにおけるルール)を把握しておくことが、トラブルを避けるためにも非常に重要です。この記事では、アメリカでの採用活動において押さえておくべき事項についてご紹介いたします。
アメリカでは、従業員を保護する法律が日本に比べて厳格です。採用活動を始める前に、「雇用機会均等(Equal Employment Opportunity:EEO)」の原則や、米国の連邦法および州法に関する基本的な理解を持ち、それに従った採用活動を進める必要があります。
雇用機会均等法(Equal Employment Opportunity Act)とは
雇用機会均等(EEO)は、アメリカ合衆国の労働法における基本原則の一つであり、「人種、性別、宗教、国籍、年齢、障害、遺伝情報、性的指向」などに基づく差別を禁止するものです。これには、雇用の選考、昇進、解雇、給与設定、労働条件など、雇用に関連するすべての側面が含まれます。
この原則は、1964年の公民権法(Civil Rights Act)第7編(Title VII)などの連邦法に基づいており、雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission:EEOC)がその運用と監督を担っています。また、各州にもこれに準じた独自の法律や規制が存在する場合があります。
採用企業は、原則として連邦および州の法律に従ったプロセスを実施しなければなりません。そのため、面接時の質問や雑談にも十分な注意を払う必要があります。
雇用機会均等法で定められている質問項目
特別な業務上の理由がない限り、以下の内容については採用面接で質問してはいけません。
年齢
人種・民族
宗教
障害の有無
性別・性的指向
婚姻状況・家族構成
妊娠の有無
出身国・国籍
確認してはいけない質問例
「グリーンカードを持っていますか」「日本国籍ですか」など、応募者の国籍やビザステータスを直接確認することは避けましょう。代わりに、「内定受諾後に合法的に米国で働くことが可能な書類を提示できますか」といった表現が適切です。
「母国語について」確認することも原則として禁止されています。例えば、業務で日本語が必要な場合には、その理由を明確にした上で、「こちらのポジションを遂行するにあたり、社内で日本語でやり取りをする必要がありますが、日常的にどの程度、日本語を使用されていますか」という形で尋ねる必要があります。
「結婚されていますか、またお子様は何人いますか」など、婚姻や家族構成に関する質問も避けましょう。例えば、「残業などが発生した場合、対応可能ですか。時間の制約などはありますか。」というように、婚姻には直接触れない形の質問に変換しましょう。
アメリカで一般的な面接での質問事項
アメリカでの面接では、以下の項目に関して質問が多く見受けられます。
自己紹介や自身の強み・弱み
転職希望理由や志望動機
今後のキャリア形成に関して
学歴(卒業大学/大学院など)
現在までの職歴(経験)とスキルに関して
出張や残業の可否
アメリカでの就労許可に関して(合法的に就労資格があるか)
応募するポジションに必要な経験とスキルに関する質問に焦点を当て、過度にプライベートな質問は避けるように心がけましょう。
Employment At-Will(任意雇用)
アメリカの法律である「Employment At-Will(任意雇用)」は、日本では馴染みの少ないCommon Lawの一環です。この原則は、オファーレターや雇用契約に多く記載されており、従業員が自由意志で退職できることと同様に、雇用主も従業員を理由の有無にかかわらず解雇できることを意味しています。
日本では長期的な雇用を重視する傾向がありますが、アメリカでは異なります。そのため、「長期的に勤務してくれますか。何年ぐらい働けますか」などの質問は、任意雇用の原則にそぐわない印象を与える可能性があるため、避けた方が無難です。
まとめ
日本とアメリカでの採用活動には、法的要件や文化的違いが存在します。アメリカで人材を採用する場合でも、アメリカの法律を遵守し、注意を払うことが不可欠です。日本の採用と労働概念をそのまま適用することは避け、十分な注意を払って採用プロセスを進めましょう。
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