「海外就職・転職」 について情報収集をはじめてみると、よく見かける 「現地採用」と「駐在員(日本採用)」の2パターンの働き方。こちらの記事では、「シンガポールの現地採用」 について、「駐在員(日本採用)」 と比較をしながらご説明します。
<目次> |
1.シンガポールにおける「現地採用」と「駐在員」の違いとは?2. 気になる待遇面について3. 給与相場について3.1 現地採用 ― 職種別3.2 現地採用 ―年代別3.3 駐在員給与事例3.4 それ以外の共通事項4. 住宅費・生活費・教育費4.1 住宅費4.2 生活費4.3 教育費5. シンガポールの税金5.1 税率について5.2 課税される所得の種類5.3 所得控除について5.4 課税されるもの代表例(一部課税されるものも含む)6. 日本人に求められるスキル |
1.シンガポールにおける「現地採用」と「駐在員」の違いとは?
海外で働く際、特にシンガポールでは大きく分けて以下の2つの働き方があります。
働き方の違い:現地採用 vs 駐在員
■ 現地採用とは?
現地法人や外資系企業に直接雇用される形態で、給与や待遇は現地の相場に準じます。
給与:現地通貨で支給
住居・交通費:原則自己負担
福利厚生:企業によって異なるが、限定的なことが多い
自由度:職種や勤務地を自分で選べる
ビザ:就労ビザ取得が必要(最低給与基準あり)
■ 駐在員とは?
日本本社からの辞令で派遣される形態で、企業からの手厚いサポートが受けられます。
給与:日本円+現地通貨、海外赴任手当あり
住居:高級コンドミニアムなどを会社負担で提供
福利厚生:医療保険、教育費、一時帰国費など企業負担
自由度:会社都合で勤務地・期間が決まる
まとめ:待遇面では駐在員が優位ですが、自由度や現地密着度では現地採用に軍配が上がります。
2.気になる待遇面について
駐在員は、給与に加えて住宅手当や各種補助があり、経済的な安心感が高いです。
現地採用は、家賃や通勤費を自分で負担するケースが多く、生活費の管理が重要になります。
近年は、外国人の就労ビザ取得が厳しくなっており、最低給与基準が引き上げられているため、現地採用でも一定の収入が保証される傾向があります。
3.シンガポールの給与相場と待遇
海外就職を考えるうえで、やはり気になるのは「給与」や「待遇面」。ここでは、シンガポールでの給与相場を職種・年代別に紹介しながら、現地採用と駐在員の違いをわかりやすくまとめます。
3.1現地採用 ― 職種別
職種 | スタッフレベル | マネージャーレベル |
営業 | SGD 3,500~5,500 | SGD 5,500~8,500 |
事務系(営業事務・秘書) | SGD 3,200~4,800 | SGD 4,800~6,000 |
事務系(貿易・物流) | SGD 3,200~4,800 | SGD 4,800~6,000 |
経理・財務・会計 | SGD 3,500~5,000 | SGD 5,000~8,500 |
カスタマーサービス | SGD 3,200~4,800 | SGD 4,800~6,500 |
技術者(製造関連) | SGD 3,800~6,500 | SGD 5,500~10,500 |
IT(エンジニア・コンサルタント) | SGD 4,500~6,000 | SGD 6,000~13,000 |
※ 1シンガポールドル ≒ 110円(2025年3月時点)
※ シンガポールでは源泉徴収がないため、給与額=手取り額となるのが一般的です。
3.2現地採用 ―年代別の目安
新卒や未経験の場合を除き、年齢のみで給与が決まることはありませんが、あくまで目安としては下記となります。
もちろん経験年数やスキルによって、給与は前後します。
20代:SGD 3,200~5,500
30代:SGD 4,500~7,500
40 代以上:SGD 5,500~9,000
3.3駐在員給与事例
役職 | 基本給 | 固定手当 (住宅手当など) |
営業ディレクター | SGD 13,000 | SGD 3,000 |
セールスマネージャー | SGD 7,000 | SGD 5,000 |
副支社長 | SGD 11,000 | SGD 4,000 |
マネージングディレクター | SGD 9,500 | SGD 8,000 |
ゼネラルマネージャー | SGD 8,000 | SGD 4,500 |
固定手当には住宅費・教育費・車両費などが含まれることが多いです。
給与の一部を日本円で日本の口座に送金するケースもあります。
3.4 それ以外の共通事項
AWS(Annual Wage Supplement):年末に1か月分の給与を追加支給する制度。支給の有無は企業による。
業績連動型ボーナス:年1~2回支給。金額は企業・個人の業績により異なる。
諸手当:交通費、住宅手当、医療保険などは企業ごとに異なるため、事前確認が重要。
休暇制度:
有給休暇:7~14日
病気休暇:14日
医療保険:企業が加入。通院・入院・事故などに対応。
4. 住宅費・生活費・教育費
4.1 住宅費
シンガポールは、アジア諸国の中でも特に生活費が高い国のひとつとして知られています。物価の高さは東南アジア諸国の中でも群を抜いていますが、その一方で治安の良さやインフラの整備状況は非常に優れており、初めて海外で生活する方にとっても安心して暮らせる環境が整っています。
住居スタイルと費用感
住居費は、他の東南アジア諸国と比較しても高額です。現地では、コンドミニアムや公営住宅(HDB)をシェアして住むスタイルが一般的です。どちらのタイプでも、家具付き物件が多く、すぐに生活を始められる点が魅力です。
シンガポール国民の約9割がHDBに居住しており、外国人もシェアという形で居住可能です。
コンドミニアムは、屋外プールやジム、テニスコートなどの共用施設が充実しており、快適な住環境が魅力です。
HDB(公営住宅)にはこうした施設はありませんが、家賃は比較的抑えられています。
契約時の注意点
家賃に加えて1ヶ月分のデポジット(敷金)が必要。
不動産エージェントを利用する場合、月額家賃の半額程度の手数料が発生。
家具の有無、キッチンの使用可否、宗教上の制約などの確認が重要です。
家賃相場(2025年5月時点、1SGD ≒ 110円換算)
コンドミニアムのシェア家賃(1SGD=約110円換算)
マスタールーム:SGD 1,500〜2,800(約165,000〜308,000円)
コモンルーム:SGD 1,000〜2,000(約110,000〜220,000円)
光熱費(PUB):SGD 50〜100(約5,500〜11,000円)
公営住宅(HDB)のシェア家賃
マスタールーム:SGD 1,000〜2,200(約110,000〜242,000円)
コモンルーム:SGD 800〜1,800(約88,000〜198,000円)
光熱費(PUB):SGD 50〜100(約5,500〜11,000円)
※HDBの家賃はコンドミニアムより20〜30%安い傾向があります
4.2 生活費
生活費はライフスタイルによって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
食費
シンガポールでは農産物の多くを輸入に頼っているため、食材の価格は日本より高めです。
地元の市場では比較的安価に購入できる傾向がありますが、輸入食品を多く扱う店舗では価格が高くなることがあります。外食費
屋台形式の飲食施設では安価に食事が可能で、地元の人々にも広く利用されています。
一方、レストランでの食事は9%の消費税と10%のサービスチャージが加算されるため、日本より割高に感じることがあります。日用品
一般的な日用品は現地でも入手可能ですが、日本製品や輸入品は価格が高めです。
現地の量販店や均一価格の店舗では、比較的手頃な価格で購入できる場合もあります。交通費
公共交通機関(電車・バスなど)は非常に安価で、通勤や通学に便利です。
タクシーも日本に比べて料金が安く、日常的に利用しやすい交通手段です。その他
シンガポールでの生活費に関する詳細な情報は、関連する記事や統計データをご参照ください。
4.3 教育費
シンガポールの教育機関別 年間授業料比較
SGD = シンガポールドル / 1SGD=約110円 (2025年5月現在)
補足情報
学校の種類 | 年間授業料 SGD | 年間授業料 JPY |
インターナショナルスクール | SGD 12,000 | 約1,320,000円 |
日本人学校 | SGD 5,500 | 約605,000円 |
ローカルスクール | SGD 4,500 | 約495,000円 |
上記の授業料に加えて、入学金や施設使用料などの追加費用が必要となる場合があります。
ローカルスクール(公立校)には入学優先順位制度があり、
シンガポール国籍保持者 → 永住権保持者 → 外国人の順で入学が認められます。
5. シンガポールの税金
シンガポールの所得税は、1月から12月の暦年ベースで計算され、年1回、自己申告により納税します。
納税者は、オンラインで収入証明を添えて申告を行い、通常3〜4月に申告手続きを行います。申告後、1〜3カ月以内に納税額の通知が届きます。
5.1 税率について
シンガポールの所得税は累進課税制度を採用しており、最高税率は22%です。
ただし、住民税は存在せず、日本と比べて全体的に税負担は軽いとされています。
また、22%の税率は課税所得の一部にのみ適用されるため、実際の平均税率はそれよりも低くなるのが一般的です。
最新の税率表や詳細は、シンガポール税務当局(IRAS)の公式ウェブサイトをご確認ください。
5.2 課税される所得の種類
以下の所得は、シンガポール国内で発生した場合に課税対象となります:
給与所得
不動産所得(賃貸収入など)
一方で、以下の所得は原則として非課税です:
利息収入
配当金
株式や不動産の譲渡益
国外で得た所得(一定の条件を満たす場合)
これは、日本の「全世界所得課税」とは異なり、シンガポールは原則として国内源泉所得のみを課税対象とするシンプルな制度です。
5.3 所得控除について
シンガポールの所得控除制度は、日本と比べて控除項目が少なくシンプルです。代表的な控除は以下の通りです:
基礎控除:年齢に応じて S$1,000〜S$8,000
配偶者控除:S$2,000(配偶者の年間所得がS$4,000以下の場合)
子供扶養控除:1人あたり S$4,000(一定の条件を満たす場合)
その他、教育費や親の扶養などに関する控除もありますが、全体としては限定的です。
5.4 課税されるもの代表例(一部課税されるものも含む)
シンガポールでは、従業員が本来負担すべき費用を会社が負担した場合、それが課税対象となるという考え方が基本です。以下はその一例です:
社宅の家賃(家具付きの場合は家具代も含む)
帰省手当(計算方法に基づく)
海外駐在員向け保険
会社が負担する国外の社会保険料の一部
車両費用
通勤交通費(日本では非課税となる場合でも、課税対象となることがあります)
このように、日本よりも課税範囲が広く、厳格な取り扱いがなされる点には注意が必要です。
6.日本人に求められるスキル
シンガポールで働く日本人に求められるスキルは、語学力、実務経験、PCスキルに加え、近年ではテクノロジー分野の専門性やソフトスキルの重要性も高まっています。
6.1 語学力
まず求められるのは、英語力と日本語力(特にビジネス文書の読み書き)です。
英語力の目安としては、TOEIC750点以上が望ましいとされますが、実際には企業や職種によって求められるレベルは異なります。
企業から求められる英語力の例:
翻訳・通訳ができるレベル
営業職として、対面や電話で交渉ができるレベル
電話の取次ぎができるレベル
ローカルスタッフに対して指示・指導ができるレベル
英語力の自己評価や向上のためには、語学テストの受験や実務での使用経験が有効です。
6.2 実務経験とスキル
多くの企業では、業界・職種における実務経験者が優先的に採用されます。ただし、職種によっては未経験者の採用も検討されることがあり、これはシンガポールの柔軟な採用文化の特徴です。
異業種・異職種にチャレンジする場合は、これまでの経験やスキルがどのように応募職種に活かせるかを分析することが重要です。
また、基本的なPCスキル(Word、Excel、PowerPointなど)は、どの職種でも必須とされています。
6.3 テクノロジー分野の専門スキル
2025年現在、以下の分野でのスキル需要が急速に高まっています:
データ分析・BIツールの活用
AI・機械学習
クラウドコンピューティング(AWS、Azureなど)
サイバーセキュリティ
プログラミング(Python、SQLなど)
これらの分野に関心がある方は、専門スキルの習得や資格取得がキャリアアップに直結する可能性があります。
6.4 ソフトスキル
多国籍な職場環境では、以下のようなソフトスキルも高く評価されます:
異文化理解力
柔軟な対応力
チームワークとリーダーシップ
問題解決力と論理的思考
特にリモートワークやクロスボーダーな業務が増える中で、円滑なコミュニケーション能力が重要視されています。
6.5 新卒・若手人材の場合
新卒や社会人経験の浅い方の場合、採用の決め手となるのは以下の要素です:
英語力
人物面(コミュニケーション力、柔軟性など)
志望動機の明確さ
また、アルバイトやインターンシップでの経験も職歴として評価されるため、職務経歴書には積極的に記載することが推奨されます。
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